中堅・中小企業に対する 「ISO14001」認証取得のおすすめ
弊社の技術顧問である笹 徹より、中堅・中小企業のISO14001認証についての寄稿です。
(環境Eメール新聞第5号より引用)
コンテンツ
◆はじめに
◆経営上のニーズがあるか
◆トップの決断
◆審査登録機関の選び方
◆コンサルタントの選び方
◆結び
◆執筆者プロフィール
◆はじめに
環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」が、誕生して約1年になる。これまでに認証を受けた事業所は約3300件(平成12年5月1日現在、環境管理規格審議委員会事務局調べ)で、電機、機械等の製造業の大手企業を中心に取り組まれてきた。
やっと最近になって中堅企業や先進的な中小企業が、お得意先からの要請もあって動き出してきたばかりである。
筆者は、環境監査員研修機関の講師として、またISO14001審査登録機関の審査員として、他方では関西地区でのISO14001認証取得コンサルタントとしてこの仕事に専念している。
こういう立場から、環境認証に関心をお持ちの中小企業経営者に提案する。
◆経営上のニーズがあるか
御社が現在行っている事業活動、製品又はサービスから考えて、環境マネジメントシステムを取り入れる経営的な価値があるかどうか。
それには将来の事業展開に当たって、総合的に判断して業績に貢献するかどうかを冷静に考える。
顧客に言われたからやらざるを得ないというのでは消極的すぎる。
現在の事業活動で大きな環境課題をかかえているか、製品や事業の性格から考えて、率先して環境改善に取り組むべきか、顧客、従業員、株主の期待はどうかなど、多面的に考えてみる必要がある。
◆トップの決断
経営上のニーズがあるからといって、すぐに着手するかどうかは別問題である。
●実施日するタイミングがよいかどうか?
●資源が割けるのか、優秀なスタッフを1年間も専任させられるか?
支出費用は高級車を1台買ったと思えば何とかなる。
事業の将来構想と現在の企業実力を見極めた上で判断する。
◆はじめに ◆経営上のニーズがあるか ◆トップの決断 ◆審査登録機関の選び方
◆コンサルタントの選び方 ◆結び ◆執筆者プロフィール
◆審査登録機関の選び方
自分の会社が環境マネジメントシステムを確立したと自分で言っても、世間に信用して貰えない。
従って、第三者に審査登録して貰う必要がある。現在、日本には約20の環境審査登録機関があるが、この中から選択するときには、次のような機関は避けたい。
●50億円の売上規模の企業と5000億円の企業を同じように考え、膨大な文書管理システムを作ることを求める機関
ISOでは現在の環境レベルは問わず、まず本システムに参加し、その上で継続的に改善していくことを目的としており、複雑な文書体系を求めているわけではない。
●大企業の感覚で、中堅・中小企業の実力以上の完璧さを求める機関
ISO9000'sのときに、よく囁かれたように、欧州に比べて、日本は重箱の隅をつつくような細かな要求をすることがある。
ISO14001が求めている本質は何かに焦点をあてて最小限の要求事項を満たしているかどうかを審査してくれる機関を選びたい。
◆コンサルタントの選び方
環境マネジメントシステムを構築するに当たって、中小企業では余分な人は抱えていない。大企業のように窓際族を養う余力はないのが普通である。従って臨時に即戦力となる人を求めるには外部からコンサルタントなどに応援して貰うことになる。この場合に、次のようなコンサルタントは避けた方がよい。
●何でも文書にしたがる人
大企業のOBで、分厚いレポートを作るのに慣れた真面目な人ほどこの傾向がある。
●現場の実態と遊離して、かくあるべしというカッコよいシステムを作りたがる人
構築したときはよいが、末長く維持してゆくには骨が折れる。
●ISO14001規格が求めている内容をよく理解していない人
安全サイドに考えて何でも文書や記録にして書類に埋もれてしまうのは困る。認証を取得するに際して、一般に審査登録機関の予備審査を受けるのが普通で、あたかも模擬試験のようなものである。
そのときに指摘されたことを追加してシステムを構築すればよいので、はじめから中小企業に不釣り合いな重いシステムを作ることはない。
◆結び
21世紀の事業経営を考えるに当たっては、環境問題への対応は避けて通れない。なかでも、事業そのものが環境に大きな負荷を与えている経営者は一刻も早く対応してほしい。以上はそのときに配慮された方がよいと思われるアドバイスである。
◆執筆者プロフィール
☆笹 徹(ささ とおる)
○(有)笹環境審査事務所 代表取締役
○(株)シーパックス 技術顧問
○CEAR登録主任環境審査員(登録番号:A0056)
○(株)テクノファ環境審査員研修コース主任講師
○複数の審査登録機関における主任審査員
○環境庁登録環境カウンセラー(事業者部門)
○元(株)クボタ 環境管理部長・理事
○資源リサイクルシステムセンター学術委員
○神戸商船大学非常勤講師
◎主な著書:『環境法と条例』(日科技連出版社),『環境側面と環境技術』,『入門ISO14000』『都道府県環境条例』(日科技連出版社・共著)
◆はじめに ◆経営上のニーズがあるか ◆トップの決断 ◆審査登録機関の選び方
◆コンサルタントの選び方 ◆結び ◆執筆者プロフィール
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